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RESEARCH / JAPAN TELEWORK HEALTH

日本のテレワーク健康影響|身体活動・メンタルヘルス・仕事機能を研究で読む

テレワークの健康影響は、通勤で得ていた身体活動、仕事上の支援、家の作業環境、仕事機能を分けると読みやすくなります。日本の研究は、幸福度や満足度の改善を示す分析と、身体活動・支援・仕事機能のリスクを示す分析を含みますが、全員に同じ方向の効果や固定の最適出社日数を示してはいません。

RTO REPORT / ANSWER

結論:健康影響は一方向ではなく、活動・支援・環境・仕事機能で分かれる

内閣府経済社会総合研究所のDiscussion Paperは、企業内のテレワーク制度変更を操作変数に使い、労働時間の減少、幸福度や仕事満足度の上昇を示す一方、心身症状や仕事と生活の両立ストレスには負の方向の推定を示しましたが、統計的に有意ではありませんでした。属性によって結果が異なる点も報告されています。

別の日本研究では、通勤が生んでいた身体活動の減少、在宅勤務の頻度と上司・同僚からの支援、家の換気や休憩のしにくさ、仕事機能の低下が別々に測られています。したがって、「在宅勤務は健康に良い/悪い」と一つの結論へまとめず、何がアウトカムで、どの期間と対象を扱った研究かを確認します。

見る軸
4つ
身体活動、メンタルヘルス、仕事上の支援、仕事機能
在宅環境研究
226人
2021年の日本の在宅勤務者を対象にした横断研究
仕事機能研究
3,532人
パンデミック前に在宅勤務経験がなかったデスクワーカー

RTO REPORT / WELLBEING

ウェルビーイング:平均の改善と、属性別の負の結果を同時に読む

ESRI Discussion Paper No.386は、日本の就業者パネルデータを使い、テレワークの内生性に対処するため企業内の制度変更を操作変数として、労働時間、時間当たり賃金、幸福度、仕事満足度、健康状態などを推定しました。結果は、労働時間の減少、幸福度と仕事満足度の向上を示しました。

一方、心身症状と仕事と生活の両立ストレスは負の方向でしたが、統計的な有意性はありませんでした。さらに、正規雇用者や20〜30代では労働時間・幸福度などの改善が示されたのに対し、非正規雇用者、子育て中の就業者、40〜50代では心身症状の悪化など負の効果も示されています。平均値だけで個人の健康状態を予測しないことが重要です。

ESRI Discussion Paper No.386の結果の方向
アウトカム・集団研究の要約読み方の注意
労働時間減少効果を推定実働時間の測定・推定方法を確認し、余暇や睡眠の改善と同一視しない
幸福度・仕事満足度向上効果を推定主観的ウェルビーイングであり、業績評価や医療上の健康指標とは別
心身症状・両立ストレス負の方向だが統計的に有意ではない「健康を悪化させる」と確定した結果ではない
属性別の差正規雇用者・20〜30代と、非正規・子育て中・40〜50代で異なる方向全就業者へ平均効果を一律に外挿しない
ESRI Discussion Paperは内閣府経済社会総合研究所の研究資料です。ここでの推定は査読済み論文や政府の政策評価と同じ資料状態ではなく、操作変数の仮定と対象範囲を確認して読みます。

RTO REPORT / PHYSICAL ACTIVITY

身体活動:通勤がなくなることと、運動全体を分ける

IshibashiとTaniguchiの査読論文は、2020年4月の最初のロックダウンの前・最中・後という3時点の日本の生活日誌データを使い、4,484人を働き方の変化パターンに分けました。身体活動は日誌とMET値から、移動目的は仕事関連かそれ以外かを区別して分析しています。

テレワークでは通勤に伴う移動と身体活動が大きく減り、通勤勤務者の一日の移動関連身体活動の方が高い結果が示されました。若年の新規テレワーカーでは、日々の移動が減ったことへの注意が必要なパターンも確認されています。ただし、同じ時期に外出制限や生活全体の変化があったため、テレワークだけの長期的な健康効果として解釈しません。

日本の生活日誌研究を読む
項目確認できる内容研究の読み方
対象3時点の生活日誌を回答した4,484人現在の全テレワーカーを代表する固定的な健康指標
測定移動目的、日誌、MET値から移動関連の身体活動を評価医療診断や長期の疾病発生率
主な結果テレワークで通勤関連の身体活動が減り、通勤者の移動関連活動が高かった通勤を戻せば健康が改善するという因果効果
異質性若年の新規テレワーカーなどで活動低下への注意が示されたすべての年齢・性別・働き方に同じ対応が必要という結論
通勤時間の短縮は生活上の便益になりえますが、通勤で生じていた歩行や移動まで自動的に代替するわけではありません。身体活動はテレワークの有無と別のアウトカムとして記録します。

RTO REPORT / STRESS SUPPORT

仕事上のストレス:在宅頻度と、上司・同僚との支援を分ける

CORoNaWorkの前向きコホート研究は、2020年12月の27,036人のベースライン調査と、2021年12月の18,560人の追跡調査から、職場を変えた人や現場・病院勤務者などを除いた6,956人のオフィスワーカーを分析しました。BJSQの仕事要求、仕事のコントロール、上司支援、同僚支援を、在宅勤務頻度別に比較しています。

低頻度・中頻度の在宅勤務者は、在宅勤務なしの人より仕事のコントロールが良い方向でした。一方、高頻度の在宅勤務者では、上司支援と同僚支援に不利な関連が見られました。論文の考察は週3日以下と職場勤務の組み合わせを示唆していますが、これは研究者の提案であり、すべての会社・職種に通用する最適日数や医療上の基準ではありません。

追跡期間
1年
2020年12月から2021年12月の前向きコホート
解析対象
6,956人
選定後のオフィスワーカー
高頻度WFH
支援に注意
上司・同僚支援に不利な関連が示された
前向きコホートは横断調査より時間順序を見やすくしますが、在宅頻度は無作為に割り付けられていません。職種、職場、本人の選択、家庭環境などの影響を完全には切り分けられません。

RTO REPORT / HOME ENVIRONMENT

在宅環境:テレワーク制度と、家で安全に休める条件は別

SasakiらのJournal of Occupational Health掲載研究は、2021年10月のE-COCO-Jオンラインコホートから、月に数日以上在宅勤務をしていたフルタイム就業者226人を対象にしました。厚生労働省のチェックリストをもとに、換気、休憩、水分補給など11項目の不十分な在宅環境を数え、BJSQの心理的苦痛と心身症状との関連を調べています。

不十分な環境の合計スコアは平均2.75でした。年齢、性別、教育、家族との同居、在宅頻度、会社規模、仕事の要求度・裁量、職場支援などを調整した後も、環境スコアは心理的苦痛と心身症状の高さに関連していました。換気不足や水分補給・休憩のしにくさも両方のアウトカムと関連しています。

在宅勤務環境研究の設計と結果
項目内容限界
対象2021年10月、在宅勤務を行うフルタイム就業者226人日本の全就業者や現在の全在宅勤務者の代表値ではない
環境指標厚労省チェックリストをもとにした11項目、平均スコア2.75環境の自己報告であり、職場設備の実測ではない
心理的苦痛環境スコアと有意な関連(標準化β=0.21、P=.003)横断研究の関連として読み、環境単独の原因効果へ広げない
心身症状環境スコアと有意な関連(β=0.19、P=.005)診断や将来の疾病発生を示す結果ではない
この研究は、制度の出社日数を決める研究ではなく、在宅で働く環境とメンタルヘルス指標の関連を調べた研究です。症状がある場合の個別判断や受診の代わりにはなりません。

RTO REPORT / WORK FUNCTION

仕事機能:生産性や診断ではなく、プレゼンティーイズムに近い指標

全国調査を使った縦断コホート研究は、2020〜2022年に、パンデミック前は在宅勤務をしていなかったデスクワーカー3,532人を追跡しました。在宅勤務を月1回以上行う群は、在宅勤務なしの群に比べ、仕事機能の低下または仕事参加の低下を合わせた複合アウトカムと関連しました。調整ハザード比は1.22(95%信頼区間1.04〜1.43)でした。

仕事機能の低下だけでは1.30(1.04〜1.61)、仕事参加の低下だけでは1.13(0.86〜1.47)でした。研究は高い職位の労働者で関連が目立つ可能性にも触れていますが、これは仕事機能・プレゼンティーイズムの研究であり、生産性の因果効果、病気の診断、すべての職種の現在のRTOの効果を示すものではありません。

仕事機能研究のハザード比
アウトカム調整ハザード比(95%信頼区間)意味
仕事機能低下または仕事参加低下1.22(1.04–1.43)在宅勤務月1回以上と複合アウトカムの縦断的関連
仕事機能低下1.30(1.04–1.61)仕事を注意深く行えない等の機能指標との関連
仕事参加低下1.13(0.86–1.47)信頼区間が1をまたぐため、単独の明確な関連とは読まない
この研究で測られた「仕事機能」は、本人が仕事を行ううえでの機能・参加の指標です。業績評価や売上などの生産性指標、臨床的な健康診断とは別に扱います。

RTO REPORT / HOW TO READ

日本のテレワーク健康研究を読む5つの手順

通勤の身体活動と運動全体を分ける

通勤がなくなったことで減る移動と、余暇の運動・座位時間・睡眠は別の測定項目です。

健康、仕事機能、生産性を分ける

心理的苦痛、心身症状、仕事機能、業績評価、売上や時間当たり成果は同じアウトカムではありません。

在宅頻度だけでなく支援と環境を見る

上司・同僚との接点、休憩・換気・水分補給、仕事の裁量と要求度を、出社日数とは別に記録します。

パンデミック期と現在を分ける

2020〜2021年の感染対策下の働き方を、現在の任意型ハイブリッド制度へそのまま移しません。

研究デザインと属性を確認する

Discussion Paper、査読論文、前向きコホート、横断研究を区別し、対象者・職位・家族条件の違いを確認します。

RTO REPORT / LIMITS

この研究群から、全員に共通する最適出社日数は言えない

ここで扱った日本研究は、公式研究資料、査読済みの生活日誌研究、前向きコホート、横断研究、全国縦断コホートという異なる設計です。調査時期の多くはCOVID-19の制限下で、在宅勤務の選択、家庭環境、職種、職位、職場支援が結果と同時に変わっていた可能性があります。

RTOの実務では、出社日数を先に固定するのではなく、身体活動、仕事上の支援、在宅環境、仕事機能、満足度や成果を対象者別に測り、導入前後の変化を確認します。個別の症状や健康上の不安は、会社の産業保健スタッフや医療専門職へ相談し、この記事の研究結果だけで自己判断しないでください。

SOURCES / 出典

このページで確認した資料

  1. 内閣府ESRI Discussion Paper No.386「テレワークが就業者の働き方やウェルビーイングに与える効果:日本におけるエビデンス」2024年3月。日本の就業者パネルデータと企業内制度変更を使い、労働時間、幸福度、仕事満足度、心身症状、両立ストレス等を推定。Discussion Paperとして扱う。
  2. Ishibashi & Taniguchi, “Workstyle change effects on physical activity and health consciousness in Japan”Transportation Research Interdisciplinary Perspectives 15(2022)100657。4,484人の生活日誌を、2020年4月のロックダウン前・中・後の3時点で分析。
  3. “Job stress and work from home during the COVID-19 pandemic among Japanese workers”CORoNaWorkの前向きコホート。2020年12月から2021年12月まで、選定後6,956人のオフィスワーカーについて在宅頻度とBJSQの仕事上のストレスを分析。
  4. Sasaki et al., “Working environment at home and mental health in employees working from home in Japan”Journal of Occupational Health 65(2023)。226人の在宅勤務者について、11項目の在宅環境と心理的苦痛・心身症状の横断的な関連を分析。
  5. “Longitudinal Association of Working From Home on Work Functioning Impairment in Desk Workers During COVID-19 Pandemic”全国調査の2020〜2022年縦断コホート。パンデミック前に在宅勤務経験がなかったデスクワーカー3,532人の仕事機能・仕事参加を分析。

研究デザイン、対象、測定指標、資料の状態を分けて読み、相関・観察結果を因果効果へ拡張しないよう整理しています。