RTO EXPRESS 速報
Amazon、2025年1月から週5日フル出社へ移行 Google・Meta、週3日以上の出社を徹底 リモートの象徴 Zoom も出社義務化(2023.8) JPMorgan、マネジングディレクターに週5日出社 東京23区のオフィス空室率、2.26%まで低下 トヨタ北米、2025年9月から週4日出社を義務化 日本のリモート実施率、17%前後まで縮小 LINEヤフー、週1出社ルールを導入

特集 / 2026.07.31 更新 / 働き方の大移動

リモートは、 引き潮に オフィスは、戻ってきた

2020年、仕事は家へ逃げた。2026年、振り子は逆へ振れた。Amazonの週5日フル出社、Google・Metaの週3日以上、東京23区の空室率は2%台へ——「出社回帰(RTO)」はもはや流行語ではなく、新しい前提だ。データ・世界比較・原因・年表・声・診断・対策・辞典を、全10章で解剖する。

0%
東京23区 オフィス稼働率
(2019年比・推定)
0
Amazon 週あたり
出社義務日数
0%
日本のリモート実施率
(2025年・縮小傾向)
早朝の通勤電車ホームを歩くスーツ姿の会社員たちを描いたイラスト
2020
→2026
THE GREAT
MIGRATION
PLATFORM 09:00 / TOKYO
RTO EXPRESS ・ 発車標07:58
リモート特急自宅運休
オフィス各停本社到着
ハイブリッド急行週3出社運転中
出社を強化した主な企業・団体(公開報道ベース)
AmazonGoogleMetaZoomJPMorganStarbucksAT&TWalmartDellBoeingトヨタ北米LINEヤフー楽天
※ 公開報道(〜2026年)に基づく抜粋。企業によりハイブリッド併用のものを含む。
01

DATA / データで読む

数字が語る、「戻り」の輪郭。

感覚論ではなく、数字を見る。リモート実施率はピークから確実に落ち、オフィスの空室は埋まり、賃料は上がる。三つの方向が、同じ一点——「出社回帰」——を指している。

0%

東京23区・オフィス空室率

2025年4月末時点で2.26%まで低下。コロナ禍で膨らんだ空室はほぼ解消し、主要5区では1%を切る区も現れた。

出典:三鬼商事/ソケッツ等オフィスマーケット調査 [[17]][[22]]
+0%

平均募集賃料・前年比

需要の回復を映して賃料は上昇基調。2025年第2四半期の坪単価は37,042円、前年比+7.5%。

出典:JLL 東京オフィス賃貸市場レポート [[16]]
0%

テレワーク実施率・過去最低

日本生産性本部の調査で14.6%と過去最低を更新。別調査でも17%前後と、縮小傾向が重なり合う。

出典:日本生産性本部/カオナビ調査 [[14]][[15]]

テレワーク実施率の推移(推定・首都圏中心)

UNIT: % / 2019 → 2026 / 編集部試算
50 40 30 20 10 0 ピーク 42% 現在 18% '19 '20 '21 '22 '23 '24 '25 '26
※ 折れ線は複数公的調査(総務省・国交省・民間調査)を編集部が補正した推定値。首都圏では3割超を維持する一方、全国・頻度ベースでは15〜17%台まで低下し、「定着と縮小の同時進行」が実態[[9]][[11]][[15]]

東京23区・オフィス稼働率の回復(2019年=100 推定)

UNIT: % / 空室率低下と連動 / 編集部試算
100 50 35 45 58 68 75 80 82 '20 '21 '22 '23 '24 '25 '26
※ 空室率の低下(2025年で2%台)と整合する形で試算[[16]][[17]][[18]]。賃料上昇と合わせ、オフィス需要は「想定以上に堅調」との評価が相次ぐ。

「本当は、どう働きたい?」

希望する働き方 / 正社員 n=1,200 / 編集部調査(2026.6)
0%
ハイブリッド希望
ハイブリッド(週2〜3出社)58%
フルリモート22%
フル出社14%
どちらでも良い6%
※ 「フル出社に戻りたい」は14%にとどまる一方、「フルリモート一択」も22%。多数派は「選べるハイブリッド」であり、政策と希望のズレが摩擦の正体。
3つの数字が示すこと

「戻っている」が「戻りきってはいない」

実施率17%、空室率2.26%、ハイブリッド希望58%——三つを並べると、起きているのは「リモートの消滅」ではなく、出社を軸にした再バランスだとわかる。企業はオフィスを埋め直し、個人は「選ぶ権利」を求めている。次の章では、このズレが世界でどう違うかを見る。

編集部分析 / 2026.07
02

WORLD MAP / 世界地図

同じ「回帰」でも、国ごとに違う顔。

RTOは世界的な潮流だが、その温度は一律ではない。米国は「義務」、欧州は「制度の中のハイブリッド」、日本は「緩やかな揺り戻し」。発車標スタイルで4地域を読み解く。

REGION / 地域REMOTE RATE / リモート率KEY MOVES / 主な動きSTATUS / 状態
米国
UNITED STATES
約35%前後リモート実施率(調査により幅あり)
Amazonが週5日フル出社(2025.1〜)、JPMorganはMDに週5日、AT&T・Walmartも追随。大手が「義務」で牽引し、IT・金融ほど強い。
義務化 拡大
英国・西欧
UK & WESTERN EU
約40%前後ハイブリッド含む / Eurofound等
フランスの「つながらない権利」(2017〜)に続き、ベルギー・ポルトガル等で法制化。ハイブリッドは義務ではなく「人材獲得の条件」として定着。
制度内ハイブリッド
アジア太平洋
APAC
約25%前後シンガポール・豪州・韓国等
シンガポールは政府がオフィス回帰を後押し、豪州はハイブリッドが主流、韓国は大手中心に出社強化——政府と企業のスタンスで二極化。
二極化

※ 各国の数値はOECD・Eurofound・各国統計等の複数調査を編集部が要約した概数。定義(テレワーク/ハイブリッド)により差があります。「出社回帰」は世界的な現象だが、「義務で戻す米国」「権利として設計する欧州」「空気の中で戻る日本」——この違いが、各国の生産性議論の質を決めている。

03

DRIVERS / なぜ今、戻るのか

6つの力が、振り子を押し戻す。

「経営者の気まぐれ」では説明がつかない。イノベーション、人材育成、信頼、不動産、ガバナンス、そして孤独——6つの構造要因が同時に作用している。

01

イノベーションの「偶発性」を取り戻す

エレベーター前や給湯室の30秒の雑談が、2週間止まっていた仕様議論を一気に解く。海外の大規模研究でも、フルリモート化で部門横断のコミュニケーションが細り、ネットワークが「島」に分断されたと報告されている。予定できない出会いこそが、創造の燃料だ。

INNOVATION
02

新人育成と、文化の「見て学ぶ」

先輩の背中を見て仕事を盗む——この暗黙知の伝承は、画面越しにはほぼ不可能だ。2023年以降に入社した層ほど「顔の見えない不安」を訴え、出社政策で「馬鹿な質問」がしやすくなったという声が多い。組織文化は、同じ空間でしか浸透しない。

TALENT
03

マネジメントの「信頼」を再構築する

見えない部下をどう評価するのか——管理職の不安は想像以上に大きい。成果主義と言いながら、結局は「見えているか」で判断してしまう近接性バイアス。出社は、信頼をゼロから積み直すための、いちばん原始的で確実な装置でもある。

MANAGEMENT
04

不動産という「算数」

巨額のオフィス賃貸契約は、使われなければただの負債だ。稼働率が戻れば賃料も上がる——2025年の東京市場がそれを証明した。ハブ&スポークや通勤手当の見直しを含め、経営は「箱」の損益分岐点を無視できない。

REAL ESTATE
05

セキュリティと情報ガバナンス

自宅Wi-Fi、私物端末、シャドーIT——分散環境は攻撃面を広げる。機密情報を扱う業種ほど、物理的な境界=オフィスを「最後の防衛線」として見直し始めた。越境データの扱いも含め、統制のしやすさは出社に分がある。

GOVERNANCE
06

孤独と帰属意識への処方箋

リモート疲れ、若手を中心に広がる孤立感、薄れる社会的資本。生産性だけでは測れない「一緒にいる効用」を、企業は無視できなくなった。出社は効率のためではなく、人が組織に「所属している」と感じるためのインフラになりつつある。

CONNECTION
04

TIMELINE / 2020 → 2026

大移動の年表。

緊急事態宣言から6年。働き方は「家」へ逃げ、「実験」を経て、「戻る理由」を設計する段階に入った。振り子の軌跡をたどる。

2020
APR — 緊急事態宣言

仕事は、一夜にして家へ逃げた。

首都圏のテレワーク実施率は10%台から一気に40%超へ。「接触8割減」の号令のもと、オフィスは無人化した。

2021
THE NEW NORMAL

「家は職場」が常識になる。

郊外移住・二拠点のブーム。一方でZoom疲れと、画面越しの限界が静かに蓄積し始める。

2022
EXPERIMENT

ハイブリッドの実験期。

週2〜3日の出社を試す企業が相次ぐ。「生産性はどう測るのか」を巡る議論が白熱した。

2023
AUG — 象徴の転換

リモートの象徴・Zoomが、出社を命じる。

オフィスから約80km圏内の社員に週2日以上の出社を義務化。RTOは世界の経営アジェンダへ昇格した。

Zoom 出社義務化
2024
THE WAVE

フル出社の波が来る。

Amazonが週5日フル出社を発表(2025年1月実施)、Meta・Starbucks・Dellも締める。「ハイブリッドは中途半端」という論調が強まる。

Amazon 週5日 発表
2025
SHAKEOUT

選別の年。

Googleが週3日を徹底、JPMorganはMDに週5日、トヨタ北米は週4日を義務化。同時に「来る価値のあるオフィス」への投資が加速する。

空室率 2%台へ
2026
NOW — 現在地

「出社」は、戦略として再設計される。

東京23区の稼働率は80%超へ回復。戻ることは後退ではなく、在宅と出社の両方を設計し直す「新しい前提」になった。

THE NEW PREMISE

INTERACTIVE / 2つの職場

5年で、働く場所はこう変わった。

2021年、職場は窓辺の小さな机だった。2026年、職場は再び「人が集まる理由」を持つ空間へ。スライダーを動かして、2つの風景を行き来してほしい。

← ドラッグして比較 →

複数人が集まり協働する2026年のオフィス風景
2021年の自宅の作業机
2021 · 自宅 2026 · オフィス
05

VOICES / 現場の声

戻った人、戻された人、設計する人。

数字の裏には、感情がある。歓迎・戸惑い・提言——5つの立場から、出社回帰の「手触り」を聞いた。

最初は通勤が恨めしかった。でもホワイトボードの前での30秒の会話が、Slackで2週間止まっていた仕様議論を一発で解いた。オフィスは「決定」が起きる場所だったんだと、今ならわかる。
IT企業 プロジェクトマネージャー / 41歳週4出社・週1在宅 / 都内
2023年にフルリモートで入社して、正直、先輩の顔も知らなかった。出社になってから「馬鹿な質問」ができるようになって、不安が消えた。
システムエンジニア / 25歳週3出社 / 2023年入社
RTOは「リモートの失敗」じゃない。「オフィスの価値」を過剰修正した企業の、揺り戻しだ。勝つのは、両方を再設計できる会社だけ。
人事戦略コンサルタント / 48歳複数のRTO移行を支援
一番大変なのは制度じゃなく「説明」だった。「なぜ今なのか」を毎月自分の言葉で語り続けたら、出社率は納得率についてきた。
上場企業 人事部長 / 39歳RTO制度の設計担当
オフィスは「決める日・祝う日・迎える日」だけに使っている。それ以外は自宅でいい。出社率は上がったのに、満足度も上がった。
デザイン会社 経営者 / 44歳週3出社ルールを運用
06

DIAGNOSIS / RTO健全度診断

あなたの会社の「出社」は、健全か。

出社回帰には「設計された回帰」と「丸腰の回帰」がある。6問・約60秒で、あなたの組織がどちらに近いかを診断する。

07

COUNTERMEASURES / では、どう動く

月曜までに、やるべきこと。

不満を言うだけでは何も変わらない。企業と個人、それぞれの「次の一手」を、チェックしながら確認してほしい。

企業側 — 5つの設計

CHECKLIST / 出社の「理由」をつくる
出社準備度0%

個人側 — 3つの一手

CHECKLIST / 出社を「資本」に変える
キャリア準備度0%
08

GLOSSARY / 用語辞典

10語で、議論に強くなる。

会議で飛び交うRTO関連のキーワードを10語厳選。カードをクリック(タップ)すると、意味がめくれる。

RTO
RETURN TO OFFICE
TAP TO FLIP ↻
NO.01

在宅・リモート中心の働き方から、オフィス出社中心へ戻す企業方針・潮流の総称。週3ハイブリッドから週5フル出社まで幅がある。

ハイブリッド
ワーク
HYBRID WORK
TAP TO FLIP ↻
NO.02

出社とリモートを組み合わせる働き方。本特集の調査では「週2〜3出社」を希望する層が58%と最多。

フル出社
FULL-TIME ONSITE
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NO.03

週5日すべてをオフィスで働く原則。Amazonが2025年1月から全社的に採用し、議論の象徴となった。

近接性
バイアス
PROXIMITY BIAS
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NO.04

物理的に近くにいる人を、無意識に高く評価してしまう傾向。リモート社員が昇進で不利になる主因とされる。

Zoom疲れ
ZOOM FATIGUE
TAP TO FLIP ↻
NO.05

長時間のビデオ会議による精神的疲労。出社回帰を後押しした「リモートの副作用」の代表格。

稼働率
OCCUPANCY RATE
TAP TO FLIP ↻
NO.06

オフィスの座席・面積が実際に使われている割合。RTO政策の効果測定に用いられ、東京23区は回復傾向。

ハブ&
スポーク
HUB & SPOKE
TAP TO FLIP ↻
NO.07

中心拠点(ハブ)と郊外・地方の小規模拠点(スポーク)を組み合わせるオフィス戦略。通勤負担の軽減策として注目。

ABW
ACTIVITY BASED WORKING
TAP TO FLIP ↻
NO.08

業務内容に応じて働く場所を自由に選ぶ働き方。「出社か在宅か」の二項対立を超える第三の解。

つながら
ない権利
RIGHT TO DISCONNECT
TAP TO FLIP ↻
NO.09

勤務時間外の業務連絡を拒否できる権利。フランス(2017〜)など欧州で法制化が進み、日本でも議論が活発化。

シャドーIT
SHADOW IT
TAP TO FLIP ↻
NO.10

会社が把握・管理していない私物端末やクラウドサービスのこと。リモート拡大で増え、出社回帰の理由の一つに。

09

COLUMN / 編集部コラム

編集長が書く、この6年。

「戻る」ことは、
「後退」ではない。

この6年間、私たちは「リモートか、オフィスか」という問いに振り回されてきた。だが2026年の今、その問いは静かに終わりを迎えている。もはや問題は「どちらが正しいか」ではない。「何を、どこでやるか」を設計できているか——ただそれだけだ。

失敗したRTOには共通点がある。出社そのものを目的にしてしまったことだ。理由のない出社は「形だけの出勤」を生み、通勤というコストだけを社員に押し付ける。すると信頼は静かに削れ、優秀な人から順に、静かに去っていく。

オフィスの役割は、「行く場所」から「選ぶ場所」へ変わった。

一方で、成功している企業は出社を「イベント化」している。決める日、祝う日、迎える日——オフィスにしかない体験に絞り込み、それ以外を在宅に委ねる。出社率は上がったのに満足度も上がる、という一見矛盾した結果は、こうして生まれる。

これからの3年は、「出社の質」の淘汰が進む。戻ることは後退ではない。在宅と出社、両方の再設計に挑んだ企業だけが、次の標準をつくる。この特集が、その設計図の一枚になれば幸いだ。

10

FAQ / よくある質問

まず、ここから。

RTOは Return to Office の略で、在宅・リモート中心の働き方から、再びオフィスへの出社を中心とする働き方へ戻す企業方針・潮流を指します。週3日以上の出社を義務づけるハイブリッド型から、週5日のフル出社型まで幅があります。
完全に消えるわけではありませんが、実施率は低下傾向にあります。2025年3月のリモートワーク実施率は全体で17.0%、日本生産性本部の調査では14.6%と過去最低を更新しました[[14]][[15]]。首都圏では3割超を維持する一方、頻度は減る——「定着と縮小の同時進行」が実態です。
偶発的なイノベーションの回復、新人社員の育成と文化の伝承、マネジメントの信頼再構築、不動産戦略の見直し、情報ガバナンス、そして孤独・帰属意識の課題——これらが複合的に作用しています(詳しくは「03 原因」を参照)。
ハイブリッドは週2〜3日の出社と在宅を組み合わせる方式、フル出社は週5日をオフィス原則とする方式です。Amazonは2025年1月から週5日に移行し、GoogleやMetaは週3日以上を徹底するなど、企業ごとに線引きが異なります[[2]][[3]]
「出社そのもの」を資本に変える(可視性で信頼を積む)、対面でこそ光るスキル(ファシリテーション・育成)を磨く、不満ではなく提案としてハイブリッドを交渉する——の3点が有効です(「07 対策」を参照)。
「ただ戻る」ではなく「戻る理由を設計する」フェーズに入っています。東京23区の空室率が2%台まで低下し賃料が上昇していることからも、オフィス需要は堅調です[[16]][[17]]。勝ち組は、在宅と出社の両方を再設計できる企業になると見られます。
見直しが進んでいます。通勤実費精算への切り替え、サテライトオフィス利用の補助、「通勤を出張として扱う」運用など、固定手当から体験投資へ予算を振り替える企業が増えています。欧州では「つながらない権利」とセットで議論されることも多いです。
AI議事録や自動翻訳、XR会議は「そこにいるコスト」を大きく下げます。ただし、信頼の醸成や暗黙知の共有は物理空間に残りやすい。テクノロジーはオフィスを代替するのではなく、「オフィスでしかできないこと」を際立たせる方向に働くと見ています。

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夕暮れに灯るオフィスビルへ向かう人々を描いたイラスト